デフォルトで匿名化されるインターネットにおけるIDとアドレス指定能力(アドレッサビリティ)
Garrett McGrath
9月 3, 2024 | 1 min read
サードパーティCookieは、アドテク業界で長期にわたり一般的に利用されてきました。視聴者の特定や確実な広告キャンペーンを展開する際の評価、広告頻度の制限やユーザーによる追跡のオプトアウトには必要な存在でした。
時間とともにCookieの数は爆発的に増え、ユーザーは自身のデータを管理することが難しくなり、一部の広告によるデータ利用が疑問視されるようになりました。その結果、規制当局やプライバシー保護を主張する声が高まり、規制当局による取り締まりやGDPRやCCPAなどの規則が作成されました。残された時間がわずかとなったサードパーティCookieに追い打ちをかけるように、今年に入りGoogleが2022年までのいずれかのタイミングでChromeからサードパーティCookieを完全に廃止するという発表をしました。
個人情報の懸念を第一に考えることが重要となり、サードパーティCookieの時代が終わりを迎えるなか、これからのインターネットはデフォルトでの匿名化が一般的となります。このニューノーマルによって、マーケッターやパブリッシャーはアドレス指定能力に対する新たなソリューションを見つけることに奔走しています。今後、バイヤーやセラーはプライバシーファーストの世界でどのようにオーディエンスを特定していけばよいのでしょうか。
方向性
今後はある意味、デジタル広告の原点に立ち返ると言われています。つまり、オーディエンスの関心でグループ分けを行い、ユーザー中心主義が再び注目されることになります。これには全面的なコラボレーションが不可欠となります。なぜなら、プライバシーファーストかつウェブベースのデジタル広告の未来は、ファーストパーティーのシグナルとプライバシーを重視したオーディエンスの2つが軸となるからです。
1. パブリッシャーやエンドユーザーはファーストパーティーシグナルを選択
一部のオーディエンス追跡を、ユーザー自身が透明性を持って設定および制御するようになります。追跡やアドレス指定能力は、「ファーストパーティーシグナル(ログインしたユーザーによる)」または、Prebidなどのオープンソースプラットフォーム経由でパブリッシャーが提供するファーストパーティー識別子が基になると言われています。
このモデルの存続には、ユーザーに対しファーストパーティデータが悪用されず、広告の質を向上することを目的に音楽の好みや趣味などユーザーの関心を追跡するということを明確に示す必要があります。ユーザーの関心に基づくデータを活用することで、ユーザーに合わせた広告が表示されます。また、ユーザーが追跡をオプトアウトできることも明確に示し、デジタル広告がオープンインターネットにもたらす特有の価値、つまり広告が消費者に対して自由なオープンインターネットを維持するということを伝える必要があります。
エクスペリエンスの向上や目に見える形での報酬のために、オーディエンスが情報提供を求められる必要性が高まるかもしれません。パブリッシャーにとっては、「情報提供を求めるだけでなく、どうすれば自身をより価値がある、魅力的なものとして見せられるか」という課題への対応策になります。
このモデルは、私たちが知るIDというものを覆してしまうように感じられますが、合意に基づいて行うため、より効果的な追跡が期待できます。消費者は信頼するブランドやサイトに個人情報を提供することで、より関与したいと考えるようになるのです。
2. 差分プライバシーグループによるオーディエンスセグメント
アドレス指定能力は、関心によってグループ分けされたオーディエンスに依存しています。このグループは、ユーザーの個人情報やし好を侵害することなくバイヤーがオーディエンスを特定できる十分な規模が必要となります。
バイサイドはサードパーティCookieが廃止されると、オーディエンスセグメントを構築し、情報を発信することができなくなります。その結果、パブリッシャーが管理するファーストパーティデータやID、または各サイトからログインする数パーセントのユーザーを頼りにインターネット全体にわたるアクティビティに確率的につながることになります。しかし、信頼できるかつ透明性のあるオープンなプラットフォームを通して、広告主に対し、価値のある十分な規模のオーディエンスセグメントを構築することができるかもしれません。デフォルトで匿名化されるシステムでは、主にオーディエンスのモデル化に重点を置きながら、バイヤーにはa)ユーザー、b)カテゴリー、c)プライベートマーケットプレイス(PMP)取引のいずれかを購入してもらうことになります。
サードパーティCookieは、新たな識別手法が生まれる可能性を残して、いずれ終焉を迎えます。この新たなIDモデルは統制と合意の上に成り立つものであり、またデフォルトで匿名化されるインターネットと連動する必要があります。そのような世界を歩んでいくには、バイヤー、パブリッシャーそして広告取引市場は、IDを自社の競争優位のために利用するものではなく、コミュニティーの共有資産となるよう協力していかなければなりません。そのための第一歩は、消費者あるいは業界内相互の信頼関係の再構築です。そうすることで、オープンで透明性がある、プライバシーを重視した形で、ユーザーとつながることができます。
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