Magnite Team
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当事者視点でコミュニティ主導によるアイデンティティの妥当性

注:この投稿は、Rubicon Projectのウェブサイトに掲載されていたものです。

このコラムは2019年7月25日にAdExchangerにて初掲載されたものです。

サードパーティーによるCookieの終焉は、特段革新的な手法を用いずとも予測することができる。過去十年間、デジタル広告の基軸通貨的な役割を担ってきたCookieを取り巻く環境は、日に日に緊張感を増している。管理側はプライバシーにまで制限事項を設け、このことがユーザー離れを加速させているのだ。Chromeにおけるサードパーティー識別子の全面禁止をGoogleが突如停止したとはいえ、サードパーティー識別子に時間が残されていないことは明らかだ。パブリッシャーの経費とマーケターの業績に危機が迫りつつある中で、代替手段に関しては依然として業界全体のコンセンサスが得られていない状況となっている。

業界団体が取り仕切るオープンソースとパブリッシャー向けの広告技術が解決策となるかもしれないという良いニュースもある。彼らはパブリッシャーによる直接的なCookieスペースの管理手段を適切な方法で提供することが可能だ。特にPrebid.orgではこれまで、標準識別子のうちどの識別子をページで許可するのかがパブリッシャーの裁量によって可能となるよう、ヘッダービディングのスタンダード向上に努めてきた。(ネタ晴らしをすると私はPrebid.orgの役員だ。)次の段階は、パブリッシャーによるヘッダービディングラッパーへのファーストパーティーCookieの適用を実現し、どの識別子をどのバイヤーに伝達するかをコントロールすることだ。

だがPrebidの可能性について深く掘り下げる前に、まずはCookie後の世界における共有識別子に用意された4つの選択肢を見てみよう。

選択肢の評価

持続型のブラウザ識別子:モバイルやCTV端末のほとんどが、基本的なユーザーモデリングやコンバージョン トラッキングを可能にする、単一でリセット可能なデバイス認証をサポートしている。持続型ブラウザ識別子はウェブ上のものと同様のシステムを適用し、全デジタル広告を一つのフレームワークに収め、他のプラットフォームと何ら変わりない環境をモバイルに提供することだろう。残念ながら、これは主要なブラウザのサポートに完全に依存するモデルであり、現行ではどのブラウザもサポートを行っていない。

シングルサインオン:この方法では何百というサイトやアプリにアクセス可能な単一パスワードシステムが要求される。この方法で独立系パブリッシャーにウォールド・ガーデンと同等のアドバンテージが与えられる。これは意義のある努力ではあるものの、大多数のサイトのログインにユーザーを誘導するという試みは失敗に終わっている。インターネットユーザー20億人にはるかに及ばない数百万のユーザーを誘導することですらほぼ不可能に近いだろう。

コンテキスト連動ターゲティング:コンテキストを活用してユーザーに接近することは新しいことではない。オーディエンスベースの購買活動が台頭するまで、運用型ターゲットは、コンテキストベースであった。これはすべての識別子をオプトアウトしたターゲットユーザーに残されたただ一つの手段ではあるものの、インタレストベースターゲティングと比較した場合、マネタイズ率は70%近く低いものになっている。特にSafariなどでギャップが埋まりつつあるとはいえ、完全に溝が埋まるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。

ファーストパーティーCookie:長年パブリッシャーは、コンテンツをユーザーの好みなどに合わせて仕上げるためにファーストパーティーCookieを使用してきた。しかしながら、サードパーティーがこれらのCookieを閲覧することができないという事実が、今日におけるプロプライエタリIDの増殖 (およぼ結果的なバックラッシュ) を生み出した。パブリッシャーが所有する単一の標準識別子に移行することでこの煩雑さが緩和され、ユーザー体験を向上し、デジタルターゲティングにそっぽを向かれることを回避することができるだろう。Digitrust、TradeDesk’s OpenID、LiveRamp’s IDLといった一般的な識別子が識別子の増殖を抑制しようと頑張っていはいるが、彼ら自身がサードパーティーモデルを基本としているため、その効果は時間と共に薄れていくことになるはずだ。このような理由から、これらのスタンダードな解決策には長期間有効なファーストパーティー識別子というアンカーが必要となる。

ファーストパーティーモデルをすべてのユーザー対して機能させるには、まずパブリッシャーに対して機能することが不可欠だ。そして後者は自分たちのドメインスペースをサードパーティーに開放することが要求されるような解決策の採用に前向きではないし、その気持ちは理解できる。

Prebidならヘッダービディングラッパー上のファーストパーティーCookieとIDマネジメントのサポートを基準に盛り込むことで、この要件から彼らを解放できる可能性を秘めている。このことと、IABなどの業界の動向を定める団体によるリーダーシップによって、パブリッシャーの収益フローの確保、マーケターの目標達成、ユーザーに対する非サブスクリプション型コンテンツアクセスへの選択肢の提供といったことを実現する極めて有効な手段としてファーストパーティーCookieが用いられるようになるだろう。

コミュニティ主導によるアプローチを目指して

将来的にアイデンティティは、それぞれの企業が競争力のアドバンテージとして利用する類のものではなく、コミュニティ共通のアセットとなっていくだろう。  ファーストパーティー識別子とオープンなスタンダードの組み合わせがどのようにしてコントロールを失わずにより大きな収益化を実現することが可能であるのかを、さらに多くのパブリッシャーが模索し始めている。そしてこのことは、マーケターやエンドユーザーにとっても結果的に良いことだ。端的にまとめるならアイデンティティの未来は、スタンダード、オープンソース、そして協力体制にかかっている。

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